発達障害の要素は誰にでもあります

2014年5月15日号
土浦市医師会 川島健吾(つちうら東口クリニック)

 人の発達には、さまざまな局面があります。運動・行動面の発達、知的認知面の発達、情緒・感情面の発達、想像力や共感力など適応能力の発達、コミュニケーションや社会性の発達などです。発達障害は、これらの発達の遅れがさまざまに影響し合っているので、正常域のごく軽い状態から、介護なしでは生きていけない重症レベルまで、さまざまです。
 軽度の発達障害の場合は、大人になって、高度のコミュニケーション能力や社会性が要求されない限り、問題になりません。ひと昔前までは、ちょっと変わった性格と思われていた人が、現代では、スマホなど、さまざまな手段で高度な情報のやりとりをするようになったために、問題視されて社会から隔絶されてしまい、不登校やニートになってしまっている場合が増えています。これは、発達障害を持つ人の問題というよりも、社会全体の寛容さや許容力が狭まってしまっているのではないかと思います。

 小児のうちに何らかの発達障害が発見される人は、世界共通して、5%前後ですから、小児喘息と同じくらいの頻度で、珍しいものではありません。発達障害を持つ人は、子どもの頃から言葉が苦手だったり、人と眼を合わせることが苦手だったり、1人遊びを好み、人に甘えることが苦手で、妙に音に敏感だったりします。年相応の落ち着きがなく、衝動的に行動するので、忘れ物が多く、身の回りが整理できないこともあります。人の気持ちを考えようとせず、勝手な行動が多いため、人から疎まれてしまいがちです。わざと問題行動をしている訳ではないので、周囲の人が早く発達障害に気づいて理解ある接し方をしてあげることが大切です。周囲の理解がなく非難されてばかりだと、ますます社会に出て行けなくなってしまいます。発達障害の要素は誰でも少しは持っているものだという気持ちで、幼児期から叱るより誉めることを増やして、その子なりの発達を寛容に見守ってあげられると良いですね。