メタボリックシンドロームと糖尿病

2017年4月18日号
土浦市医師会 伊坂正明(日立製作所土浦診療健診センタ)

 健診や人間ドックでは肥満の指標としてBody MassIndex(BMI=体重÷身長2)が用いられおり、BMI≧25が肥満の目安となります。肥満はエネルギーの消費の低下やエネルギーの摂取の増加により発症します。家事家電の普及、自家用車や公共交通の普及、工場のオートメーション化により、日常生活で消費するエネルギー消費が著しく減少しています。摂取エネルギーには変化が認められませんが、消費エネルギーが減ったことを考えると相対的エネルギー摂取は増加していると考えられます。
 また栄養成分別にみると、食事の穀類摂取(デンプン質)は減少していますが、脂質の摂取量は著明に増加しています。肥満には内臓肥満(男性:腹囲≧85cm、女性:腹囲≧90cm)と皮下脂肪肥満があります。内臓肥満はメタボリックシンドロームの素地となり、内臓脂肪から分泌される様々なホルモン様物質の異常により高血圧、高脂血症、糖尿病の発症、ひいては動脈硬化症の発症が促進されます。
 日本人のメタボリックシンドロームは高血圧・高脂血症型とされており、各々の合併率は約90%と高値です。他方、メタボリックシンドローム患者では、糖尿病の発症リスクは2.2倍となることから、メタボリックシンドロームは糖尿病のリスク因子とも考えられます。また、メタボリックシンドロームに糖尿病を合併すると、心筋梗塞・狭心症や脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクは約5倍となると考えられています。
 肥満を改善して、メタボリックシンドロームの発症を予防すること、またメタボリックシンドローム患者さんの糖尿病合併を抑制することが、心筋梗塞・狭心症や脳梗塞の発症予防に有用と考えられます。このため生活習慣を改善し、日常生活でのエネルギー消費を増大させること、揚げ物・炒め物などの脂質の制限や菓子類・炭酸飲料・ドリンク剤などに含まれている単純性糖質(砂糖類)の制限により、エネルギー摂取の抑制をすることが重要です。