糖尿病

2011年1月18日号
土浦市医師会 松下和子(日立製作所土浦診療健診センタ)

 平成22年7月より糖尿病の診断基準が変わりました。現在と過去の血糖状態を同時に見ることで今までより正確に糖尿病の早期発見ができ、それにより早期治療につなげることができるようになりました。

 食べたご飯やパンなどの炭水化物は腸から体内に吸収されブドウ糖という形で血液に入ってきます。糖尿病はそのブドウ糖を血液からうまく体の臓器の細胞に取り込めず慢性的に血液のブドウ糖の値(血糖値)が増えてしまう病気です。

 血糖値は食事の前後で変動しますが、今までの糖尿病の診断のための検査法では血糖値がそのとき高くても日を改めて再度血糖値の高いことを確認しないと簡単には糖尿病だと診断できませんでした。これですと検査前数日間だけ節食する方などは血糖値が上がりにくくなり、本当は糖尿病であっても見逃してしまうことになります。また診断のためだけにまた日を改めて来院するのは忙しい現代人には大変です。

 過去1~2か月前の血糖値の値を反映するヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)は今までは補助的な扱いでしたが格上げしてあらたに診断基準にくわえられ血糖値とHbA1cが両方とも糖尿病型の数値なら、1回の検査で糖尿病と診断できるようになりました。これで早期の糖尿病や糖尿病になりかけの方(予備軍)がより簡単に見つかるようになりました。

 早期発見が大事な理由は、予備軍の段階では食前血糖は大体正常で食後血糖が高いだけですが、その状態でもすでに全身の血管が糖によって蝕まれ始まることになり動脈硬化が早いスピードで進行していくからです。それが無症状のまま脳卒中、網膜症、心筋梗塞、腎症、壊疽などにつながっていきます。

 また糖尿病というのは放置すれば進行する疾患です。進行を食い止めなくてはいけませんし病気になる手前の段階で見つければ本格的な病気になる前に食い止めることも可能です。予備軍といわれた方は放置すれば年5~7%の方が糖尿病になっていきます。

 ですが、太っている人は特に2~3Kg減量しただけで70~80%の方が糖尿病に進行するのを食い止められるという論文もあります。早く診断され早くから適度な運動、腹八分目、定期的な検査などを心がければ逆に一病息災となることでしょう。予備軍といわれた方もこの段階で本格的な糖尿病になるのを食い止めて予備軍からも脱してください。