物忘れ外来

2018年7月18日号
土浦市医師会 角田孝(霞ヶ浦医療センター)

 当院で物忘れ外来を標榜開設して2年が経ちますが、物忘れを心配して外来を受診される患者さんが急増しています。
 2012年高齢社会白書では65歳以上の高齢者7人に1人の462万人はすでに認知症であり、2025年には高齢者5人に1人の約700万人が認知症になるとの予想が発表されました。また高齢ドライバーによる交通事故の増加を受け、2017年道路交通法が改正され、75歳以上のドライバーの、免許更新時または違反行為後の運転適性検査が義務付けられたことが患者増の大きな要因と考えられます。
 加齢による生理的認知機能の低下は、個人差はありますが多かれ少なかれヒトに認められます(一度聞いた電話番号を覚えられない)。また経験の増加による、同様な出来事の判別の困難さは普通に起こります(一週間前の夕飯のおかずを覚えていない)。しかしながら、病的認知症は本人の日常活動を損なうのみならず、深刻な社会的問題も引き起こします。地域の防災アナウンスでは徘徊老人の知らせが鳴り渡り、高齢ドライバーの事故の報道が絶えません。
 当院での物忘れ外来開設以来、百数十名の方が来院されましたが、良いタイミングで治療または予防を開始できたのは1割程度です。7割はすでに中等度~高度認知症で、2割は正常範囲内でした。
 「年くってっからちったーしょーがねーよ」が土地柄合言葉ですが、治療・予防可能であれば、認知症も悪性腫瘍と同じく早期発見が望まれます。先の運転適正検査で及第点に達しないため、診断を求めに来院される場合の多くは、すでに免許更新が危ぶまれる状態です。
 物忘れ、認知症は治療可能なものも進行予防可能なものも多く、早期診断を強くお勧めします。