在宅医療について

2018年11月15日号
土浦市医師会 大塚佐知子(つちうら在宅診療所)

 私は、3年前に土浦の実家で母を看取りました。膵癌の再発が分かった時、母は「家に帰りたい、家で死にたい」と言いました。そこで私が主治医になり、訪問看護師さん、ケアマネージャーさん、ヘルパーさん、福祉用具の担当者と独居の母のために急遽「チーム在宅」を組みました。
 初めの3か月は、癌末期患者とは思えないほど、今までの生活と変わりなく穏やかに過ぎました。居間でテレビを見ながら痛み止めの注射や薬の点滴などを受け、休みのたびに私と買い出しに出かけては、毎日自分で料理して食べていました。
 土浦花火大会が終わって間もなく、母は倦怠感が強くベッドから起き上がれなくなりました。そこからの12日間、私は下の娘(当時7歳)を連れて毎日泊まり込み、仕事は、日数、時間ともに削りました。守谷(私の自宅)に帰ったり、土浦(実家)に来たり、日立(当時の職場)に行ったりで、ふと運転中、私は今どこに向かっているんだろうと分からなくなる事がありました。母は「サイダーが飲みたい」「アイスが食べたい」「カニが食べたい」などとわがままを言いたい放題で、下の娘と仲良くおやつを食べたり、学校の話を聞いて笑い合ったりしていました。他愛のない日常がそこにありました。北海道から届いたカニをしこたま食べた翌朝から意識がなくなり、次の日の夜、亡くなったのです。この時、聴診器で胸の音を聞いていたのは7歳の娘でした。
 その後、私は「やっぱり在宅医療はいいなあ、ここ土浦で在宅診療所を開こう、そしてみんなに在宅を楽しんでもらおう、家で死んでもらおう」と考え続け現在に至っています。
 在宅医療は、一人一人のためのオーダーメイド医療です。病院でしかできない医療もありますが、家でできる医療もたくさんあります。土浦でも在宅医療を行っている医師が増えています。どうぞご相談ください。