はしかについて

2019年2月15日号
土浦市医師会 鈴木敏之(おおつ野こどもクリニック)

 麻しん(はしか)は麻しんウイルス感染により、高熱、全身の発疹などがあらわれます。合併症として肺炎、脳炎などがあり、場合により死亡することもあります。空気感染といって同じ空間に麻しん患者がいると、その患者に接触しなくても感染してしまう非常に感染力の強い病気です。2007年に10~20歳代に全国的な大流行が起こったため、2008~2012年度の5年間、中学1年生、高校3年生に2回目の麻しん風しん(MR)ワクチンの定期接種が実施されました。2008年に1万人を超える麻しん患者がいましたが、その後着実に減少し、2015年3月、WHOから麻しん排除国の認定を受けました。麻しん排除の過程で、ワクチン2回接種は非常に大きな役割を果たしました。2006年以降のMRワクチンの2回接種(1回目が1~2歳、2回目が小学校入学前の1年間)導入と5年間の追加接種を合わせると、30歳未満の多くがMRワクチンを2回接種したことになります。しかし、2019年度に30~46歳になる人は1回の接種機会のみで、2019年度に47歳以上になる人にワクチン接種機会は無く注意が必要です。国内から排除された麻しんですが、その結果、おもに小児が罹患する病気であったものが、海外渡航者や観光業者などが麻しん罹患のハイリスクグループになってきています。2016年夏、海外からの帰国者が麻しんにかかり、国内で感染者が広がりました。当該男性はMRワクチンを接種していませんでした。麻しんが「輸入感染症」になっていることを象徴する「事件」でした。たとえ国内から排除できても世界的に排除できなければ麻しんの脅威はまだ大きいのです。したがって、日頃から高いワクチン接種率を維持すること、そして『海外渡航前に罹患歴・予防接種歴を確認し、罹患歴がなく、2回の接種歴が確認できない場合には、渡航前にMRワクチンを受けること』が重要です。