胃がんとピロリ菌について

2014年4月15日号
土浦市医師会 山田幸太(土浦ベリルクリニック)

 1983年のWarrenとMarshallによるピロリ菌の発見から30年が経ちました。今では、ピロリ菌は日本では皆が知っている最も有名な細菌になりました。ピロリ菌の多くの研究成果により、ピロリ菌と胃炎、胃がんとの関係が明らかになってきています。
 ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫(悪性リンパ腫の1つ)、 胃がんの原因になることが分かっています。ピロリ菌に感染していても、全員が必ず胃に病気ができるわけではありませんが、胃潰瘍の7割、十二指腸潰瘍の9割がピロリ菌感染によって起こり、除菌によって治癒することが多いです。
 ピロリ菌と胃がんとの関連性については、1994年、WHO(世界保健機構)とIARC(世界癌研究機構)から「確実な発がん因子」と認定されました。ピロリ菌に一度感染すると自然に消えることはほとんどなく持続的に感染し、胃粘膜を傷つけて胃に炎症を起こします。これが萎縮性胃炎となり、胃がんが発生する母地となります。そこに環境や食生活の因子が加わって、胃がん発症リスクが高まると考えられています。
 この胃がんを起こす危険性を高めるものが、最新の研究で、3つ明らかになっています。
 まず高血糖。「ピロリ菌感染+高血糖」の人は、「ピロリ菌なし+血糖正常」の人の4倍、「ピロリ菌感染+血糖正常」の人の2.2倍胃がんになりやすかったのです。
 次に喫煙。「ピロリ菌感染+喫煙」の人は、「ピロリ菌なし+非喫煙」の人の11倍、「ピロリ菌あり+非喫煙」の人の1.6倍胃がんになりやすいのです。
 最後に塩分のとりすぎ。これは動物実験ですが、「ピロリ菌感染+がんになりやすい薬+塩分とりすぎ」は、「ピロリ菌+がんになりやすい薬+塩分正常」に比べて3倍も胃がんになったのです。

 高血糖、喫煙、塩分とりすぎの方、ピロリ菌の検査、除菌をすぐに考えた方が良いですよ!