インフルエンザ

2002年10月16日号
土浦市医師会 石川清人(石川小児科医院)

 インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、伝染力が強く、他のかぜ症候群より重症で、日本では、毎年冬季に数百万人が羅患し、死亡数も約千~1万人以上と推定されています。鼻や咽喉から感染を受けると、1~2日の潜伏の後、悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などで発症し、39~40℃の発熱が3~5日続いて解熱します。嘔吐や下痢腹痛などの消火器症状を示すこともあります。解熱後もせきや鼻水などは残るものの、通常約1週間で体調はもとに戻ります。発熱が5日以上続いたり、全身状態が改善しないときは合併症が心配になります。
 最近は発症3日以内の鼻汁や咽頭ぬぐい液を用いた迅速診断キットが普及して10~30分くらいで診断が可能になりました。そして抗インフルエンザウイルス薬も使用できるようになりました。発症48時間以内に使えば一定の効果が期待できますが、抗ウイルス薬のほかに対症療法も重要で安静と保温、水分と栄養の補給を保ち、高齢者の脱水症状や心不全や肺炎に特に注意する必要があります。
 乳幼児では急激な体温上昇時に痙攣を起こしやすく、10分以上痙攣が続いたり意識が十分回復しないときは、脳炎・脳症の可能性を考えて集中治療のできる施設に急送する必要があります。インフルエンザ脳症はまだ原因不明ですが、昨日元気だった子どもが突然高熱を出し、多くは発症2日以内に痙攣の重積や意識障害をおこして、約30%が死亡、25%が後遺症を残してしまう悲惨な病態です。平成13年から高齢者のインフルエンザワクチン接種が一部公費負担になりました。小児科としては乳幼児にもシーズン前にワクチンを接種しておくことをおすすめします。ワクチンが脳症の予防になるという根拠はまだありませんが、ワクチンを接種しておけば、罹ることはあっても、はるかに軽症ですむと確信しています。