食物アレルギーについて

2015年4月15日号
土浦市医師会 伊本夏樹(日立製作所土浦診療健診センタ)

 こどもの食物アレルギーは増えてきていますが、その原因は明らかではありません。蕁麻疹が出るような軽いものから、アナフィラキシーと呼ばれる命の危険をともなう重いものまで、症状や重症度の幅が広いために、一般の方はもちろん医療関係者でも正しくイメージすることは難しいと思います。特に、重い症状のお子さんがいる保護者の方は、誤食の心配で神経の擦り減る毎日ではないかと思います。
 食物アレルギーの対応策として、こどもの成長にともなって免疫のバランスが整い、食べられるようになる(耐性獲得)まで、原因食品を取らないこと(除去)が行われますが、これには注意が必要です。こどもは成長のために、充分な栄養をバランスよく取る必要があります。また、集団生活が安全でかつなるべく支障をきたさないよう、食品の除去は必要最小限でないといけません。そのためにはキチンとした評価が重要です。
 進歩しつつありますが、血液検査(血中抗原特異的IgE抗体)は評価ツールとして限界があり、ハッキリ白黒をつけることができません。保育園や幼稚園から病院で検査をするように言われることは少なくないと思いますが、それはとても残念な勘違いです。検査では、陽性でも全く症状がでなかったり(偽陽性)、逆に陰性でも症状がでたり(偽陰性)することが良くあるため、検査結果だけを頼りに除去するのは誤りです。
 明らかに症状が出る食品は除去します。重い症状でも原因がはっきりしない場合や、除去食の解除ができるかどうかを判断する場合に有用なのは「食物経口負荷試験」ですが、対応できる医療機関は限られています。
 また、たとえしっかりと評価し、除去食の対応をとっても、誤食はゼロにはなりません。誤食をしてしまったときの善後策をあらかじめ準備しておくことが大切です。
 園には「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」が、学校には「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が、一般臨床医には「食物アレルギー診療ガイドライン」が存在します。これらが有効に活用され、こども達に安全と安心が提供されることを願っています。