インフルエンザ

2010年10月15日号
土浦市医師会 川嶋健吾(つちうら東口クリニック)

 インフルエンザは感染力が強く、大流行を起こしやすいウイルス感染症です。咳の飛沫を吸い込んだり、ウイルスが付着した物に触れた手で自分の口や鼻や目に触れて感染し、約3日の潜伏期の後に、突然の高熱や関節痛などの全身症状で発症し、咽(のど)から気管支にいたる気道の全粘膜が発赤腫脹するので鼻汁や咳が激しく、高熱が続き、最近の二次感染を起こしやすくなります。多くは1週間以内に改善しますが、乳幼児や高齢者や妊婦や慢性の持病のある人では、脳症や肺炎などを併発して重症化しやすい特徴があります。我が国では毎年冬に流行し、年に数百万~1千万人以上が罹患し、数千~1万人以上が死亡しているのではないかと推定されています。

 昨年流行したブタ新型インフルエンザは8月下旬ころから全国的に広がりました。今年もすでに近隣の学校で学級閉鎖が出ています。ウイルスには抗生物質が効きません。インフルエンザにはタミフルなどの抗ウイルス薬がありますが、最近の調査では小児インフルエンザの10数%に薬剤耐性ウイルスが検出されています。予防接種が最も有効ですが、変異しやすいウイルスなので、その年の流行にあったワクチンを毎年接種することが必要です。

 今年のワクチンには昨年のブタ新型インフルエンザ株が加えられたので、今のところは通常の季節性ワクチンを打てば良いのですが、世界的に心配されている高病原性鳥インフルエンザが流行するとワクチンが間に合いません。乳幼児や若者で重症化しやすく致死率が60%以上なので、ほんとうに大変なことになります。

 現在あらゆるインフルエンザの重症化を防ぐ有効な手段と考えられているのが葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)などシナモン入りの漢方薬です。ウイルスによるサイトカインストーム(嵐のように激しい全身性炎症反応)を抑えて一気に燃え上がらないようになるので、高熱やウイルス肺炎が軽減され致死率が下がることが動物実験で証明されています。

 10月からワクチン接種が可能ですので、心配な方は早めに予防接種をした方が良いと思います。