糖尿病について

2019年7月17日号
土浦市医師会 今野由美(つちうら糖尿病内科クリニック)

 私は糖尿病の診療に携わって、20年以上となりました。1991年の研修医の頃の処方薬は、注射薬であるインスリンと、内服薬のSU剤と呼ばれるオイグルコン・ダオニールやグリミクロンしかない時代でした。
 その後、生体に効果を及ぼす仕組みやメカニズムの異なる糖尿病薬が開発され、αーGI、ピオグリタゾン、グリニド系、そして2009年にDPP-4阻害薬が、2014年にはSGLT-2阻害薬が発売されました。また、メトホルミンの有用性が確認され、処方されることが多くなってきています。その結果20年前と比べたら、かなりの患者さんがインスリン注射を使わずに内服薬で血糖コントロールできるようになりました。
 しかし、その一方で、健診で異常を指摘され、病院受診を指示されていても、受診しないまま病状が悪化、また健診を受ける機会はあるのに受けずに悪化している方を見ることも少なくありません。
 48歳の主婦が呼吸困難で病院へ救急搬送されました。その時に初めて分かったのはHbA1c14%と高血糖・心不全でした。市の特定健診の案内は毎年郵送されていましたが、自覚症状もなかったため健診も受けずにいたそうです。
 眼底検査を行うと前増殖網膜症で、黄斑部浮腫を起こして視力は極端に低下しており、腎臓も弱っており、あと1年で透析が必要になりそうでした。この方が、もっと早く特定健診を受けていれば、結果は違ったものになったのではないかと残念でなりません。
 自覚症状がなくとも、健診で異常が見つかったら、病院を受診し検査や治療を受けることで、大事に至らないようにすることも可能です。また、健診をきっかけに食事や生活習慣を見直して改善するのであれば、言うことはありません。
 糖尿病患者の場合、健康な人と比べて寿命が10年ほど短くなると言われています。定期的に健診を受けていただき、そして異常が見つかれば病院を受診して、詳しい検査を受け、その後の生活に役立てていただきたいと思います。