神経発達症(発達障害)

2023年5月16日号
土浦市医師会 川嶋浩一郎(つちうら東口クリニック)

 発達障害は神経発達症と言い、さまざまな状況から生じる脳の特性です。小中学生の15人に1人はいると言われ、増加傾向にあります。脳は乳幼児期に強いストレスを受けると変形して脳発達に支障をきたします。また、妊娠中に葉酸を摂取しすぎても、足りなくても脳発達に影響するので、葉酸は野菜から摂取するといいでしょう。

 神経発達症には、コミュニケーションが苦手でこだわりが強い自閉スペクトラム症(ASD)と、順序立てた行動や待つことが苦手な注意欠如多動症(ADHD)、 読み・書き・計算のいずれかが極端に苦手な限局性学習症(SLD)があります。

 ASDは、脳の安心感に関係するセロトニン神経系と、愛着歓喜に関係するオキシトシン神経系の構造と機能に異常があるために、脳の高次中枢である前頭前野機能に変調をきたします。そのため、比喩表現や否定的な言動の裏の意味が理解できず、ASD特有の対人関係の苦手さやこだわりや感覚過敏を生じ、防衛本能の中枢である扁桃体を十分に制御できずに、交感神経に過緊張が生じやすくなっています。不安や緊張、ストレスを感じやすいので、家族や周囲の人たちの十分な理解と協力が必要で、小さい頃から不安を取り除き、安心感を与えることがとても大切です。幼児でも飲める、食品に近い漢方薬で、セロトニン神経やオキシトシン神経機能を高めて、不安を軽減できるものもあります。

 ADHDは、報酬系のドパミン神経と、実行系のノルアドレナリン神経の不調により引き起こされます。注意のバランスが悪くなり、1つの事に集中できずに注意散漫になったり、過集中して周囲の状況変化に対応できなくなったりしますが、症状を緩和する薬もあるので、困っている場合は医療機関にご相談ください。

 SLDの神経メカニズムはよくわかっていないので、 教育的配慮に重点が置かれています。

 この3つの神経発達症は不調の程度がさまざまで、また重複することもあるので、個々に対応を考える必要があります。脳の特性なので、できるだけ早く理解して対応し、社会環境を整えることが大切です。また、 必要に応じた薬や漢方薬を継続することで、脳の発達を促すことができます。