塩と血圧のはなし
2025年11月5日号
土浦市医師会 飯野均(よつばクリニック)
高血圧の主な原因の一つとされている「塩」ですが、人間が生きていく上で最低限必要とされる塩分量は1日あたりどのくらいか知っていますか。正解は、わずか0.5〜1.5g程度です。しかし、私たち日本人の平均的な塩分摂取量は約10gで、世界的に見ても有数の塩分摂取量を誇る民族です。さらに、茨城県においては全国平均よりやや多い 約11gという結果になっています。一方、アマゾンのヤノマミ族やエスキモーの塩分摂取量は1日2g以下で、 これらの集団では、高血圧はほとんど見られません。ナトリウム(塩分)を過剰に摂取すると、体は上昇したナトリウム濃度を元に戻そうとして水分を溜め込みます。その結果、血液量が増加し、血圧が上昇します。
厚生労働省が示す目標塩分摂取量は、男性で1日7.5g未満、 女性で6.5g未満です。WHO(世界保健機関)では、5g未満を推奨しています。
減塩は健康寿命を延ばすためにも非常に重要です。家庭での塩分摂取の多くは、しょうゆ、味噌、塩などの調味料によるもので、少しの工夫で減らすことができます。例えば、汁物は1日1杯までにする、麺類のスープは残す、スプレー容器のしょうゆを使用する、などが挙げられます。腎不全が無ければ、塩のかわりにスーパーなどで販売されている減塩の塩(塩化ナトリウム+塩化カリウム)を利用する手もあります。大量に汗をかいた時や低血圧、起立性低血圧などの特別な場合を除き、塩を意識して摂る必要は特になく、減塩によって健康障害が生じることは基本的にありません。
なお、ヒトの味覚はおおよそ10歳頃までに形成されるため、大人になってからの高血圧や循環器疾患を予防するためにも、幼少期から塩分を控えた食生活を意識することが重要です。家族全体で減塩を意識していきましょう。
