高齢の方の皮膚のかゆみ(老人性皮膚そう痒症)

2006年10月17日号
土浦市医師会 村木良一(わたひきクリニック)

 秋から冬になると空気が乾燥するため、皮膚が乾燥してかゆみに悩まされる高齢の方が少なくありません。かゆみを引き起こす皮膚病変がないにもかかわらず、かゆみがある状態を皮膚そう痒症といいます。皮膚そう痒症の原因としては内臓の病気(糖尿病、慢性腎不全、閉塞性黄疸、甲状腺の病気、貧血など)や薬剤の影響(ある種の血圧を下げる薬など)がありますが、大半は皮膚の乾燥(ドライスキン)が原因で、老人性乾皮症とも呼ばれます。

 皮膚のうるおいは皮膚の最も外側(角質層)で水分を保持する力に左右されます。角質の水分は、皮脂腺で作られる皮脂、表皮細胞で作られる角質細胞間脂質、および角層の細胞の中にある天然保湿因子の3つの要素により保たれます。年齢を重ねるとともにこれら3つの要素がすべて減少し、皮膚が水分を保てず、乾燥してかさかさするようになります。この状態が老人性乾皮症で、特に下腿のすねの部分や下背部に多くみられ、粉をふいたような小さな落屑やさざ波のような浅いひび割れ状態になりますが、しばしば二次的にかきこわしたり、湿疹化(皮膚の強い炎症)を伴って、皮脂欠乏性湿疹と呼ばれる状態になります。

 老人性乾皮症の予防には、①低湿度の環境を避ける(過度の暖房を避け、加湿器を使用すること)、②皮膚の乾燥を避ける(熱すぎる風呂や長湯、ナイロンタワシなどを避け、せっけんで洗いすぎないこと)、③下着は木綿などできるだけ刺激の少ないものを選ぶなどの点に注意します。

 かゆみに対しては、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤が用いられますが、人によっては眠くなることがあります。皮膚の乾燥に対しては白色ワセリンやいろいろな保湿剤を用いますが、入浴後すぐに外用するとより高い効果が得られます。また、かきこわしや湿疹病変を生じたときには、その部位にステロイドの外用剤を塗布します。これからは空気も乾燥し、暖房が欲しい季節になります。くれぐれもスキンケアをお忘れなく。