糖尿病性神経障害について

2018年10月16日号
土浦市医師会 友常孝則(友常クリニック)

 糖尿病が長期間にわたると、患者さんのQOL(quality of life)、生命予後を脅かす糖尿病性合併症を引き起こします。とくに糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症は3大合併症といわれています。しっかり血糖を良好に保つことにより、糖尿病性合併症の発症、悪化を遅延あるいは阻止することができます。一度合併症を発症、悪化させてしまうと、その病態はほとんどが不可逆性であり、完全に治癒させることは困難といえます。
 糖尿病性神経障害は、温覚、痛覚、などの感覚の障害が起こります。熱い、冷たい、痛いといった感覚が鈍くなるので、足の靴擦れに気づけず壊疽になる、やけどに気づけず壊疽になることがあります。その一方で、足がじんじんする、びりびりする、靴下を履いていないのに履いているような感覚になる、といった症状もあります。前述の感覚神経だけではなく、交感神経、迷走神経などの自律神経も障害されることがあります。自律神経が障害されると、血圧の調整がうまくいかず、起立性低血圧をおこしたり、腸の活動が障害され便秘を引き起こしたり、膀胱の活動も障害され排尿障害なども引き起こします。これらの症状は発症予防、症状緩和など対策が必要であり、何よりも良好な血糖コントロールが必要です。神経症状が発現した場合、例えば両足のしびれのせいで仕事にならない、夜も眠れないなどの症状のときは、しびれを緩和させるお薬を内服するといった治療をします。しかし一度発症すると、薬効が効きづらいことが多く、症状を緩和させることが困難な場合が多いです。また、神経障害は腰椎椎間板ヘルニアや脳の病気などの、糖尿病以外の疾患でも発現する場合があります。糖尿病以外のその他の病気がないか、検査することが必要となります。
 糖尿病にならないように、過食に注意すること、日常的に運動習慣を持つこと、定期的に健康診断を受けることが重要です。