子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)について

2021年1月15日号
土浦市医師会 石川和明(石川クリニック)

 子宮頸がんは、子宮の入り口にできる「がん」です。毎年約1万人の女性がかかり、毎年2900人が死亡しています。最近では、20~40歳代前半の若い人に増加しており、30代までに毎年1200人の女性が子宮頸がんで子宮を失っています。

 その原因は、性行為で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)です。HPVは数種類ありますが、性交経験がある女性の80%は生涯で一度は感染します。HPVに感染しても多くの方は治りますが、HPVに持続的に感染し続けるごく一部の女性において、子宮頸がんを発症します。

 HPVの感染を予防し、子宮頸がんの発生を防ぐことができるのがHPVワクチンです。現在、世界中の多くの国々の若い女性、そして、一部の国では男性にも接種されていますが、日本で接種している人はごく少数です。その理由は、「副作用」にあるのでしょう。

 確かに、注射部位の一時的な痛みや腫れ、また、痛みや不安のために失神を起こした事例が少数例あります。しかし、頭痛や倦怠感、筋力低下、不随意運動などの多様な症状については発生率も極めて低率で、かつワクチン接種との因果関係を証明するような科学的、疫学的根拠は現在のところ示されていません。

 10~16歳の女性がHPVワクチンを接種すると、子宮頸がんの発症を88%も減少させることがわかっています。HPVワクチンは定期接種であり、小学6年生から高校1年生までの女子への接種は無料です。また、より多くのタイプのウイルス感染を予防できる新しいワクチンは、すでに国の承認を受けています。さらには、日本でも、男性への接種も承認される見込みです。

 病気は、「治す」だけではなく「予防」する時代です。子宮頸がんはワクチンで予防し、検診で早期に発見ができます。ぜひ若い方々はワクチン接種を、そして、女性は子宮頸がん検診を受けましょう。ワクチン接種については、かかりつけやお近くの医療機関にご相談ください。