腎臓内科が診る腎臓病について

2022年2月15日号
土浦市医師会 岩本俊輔(岩本クリニック)

 腎臓という臓器をご存じですか?腎臓は尿をつくる以外にも、さまざまな機能を持っています。例えば、①体の水分を調節する②老廃物を排せつする③電解質のバランスを保つ④血液を弱アルカリ性に保つ⑤血圧を調節する⑥赤血球を産生するためのホルモンを分泌する⑦骨を作るビタミンDを活性化する、などです。

 特に⑤の血圧調節との関係から、腎臓の機能が悪いほど動脈硬化が進むことで、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患の発症率が高くなるといわれています。

 腎臓内科が中心に診療する腎臓病は、腎炎やネフローゼ症候群、嚢胞腎などで、主に薬を使った治療が行われます。腎炎やネフローゼ症候群は膠原病や感染症をきっかけにした免疫異常が、嚢胞腎は遺伝的要因によることが多いといわれます。そしてこれらの腎臓病が進行すると、腎臓の機能が低下した「腎不全」と呼ばれる状態となります。また、最近は糖尿病や高血圧などの生活習慣病が腎不全の原因の多数を占めており、生活習慣病とあわせて治療していくことが大切です。腎臓病は早期に発見して、早期に対応することが重要です。というのも、病気がある程度進行すると、回復が難しく、長期間かけてゆっくりと腎臓の機能が失われてしまう(慢性化といわれます)からです。この慢性化した腎臓機能低下の状態を総称して慢性腎臓病(CKD)と呼び、我が国の成人の8人に1人が罹患しているといわれます。慢性腎臓病が末期状態まで進行すると体のさまざまなバランスを維持することが難しくなり、腎代替療法と呼ばれる治療(人工透析・腹膜透析・腎臓移植)が必要となります。

 腎臓病は発症早期にはあまり症状がないことが多く、末期的な状態になるまで訴えが出てこないことも少なくありません。そのため、早期発見には健診などでの定期的な尿検査が最も重要です。特に尿検査でタンパク尿や血尿を認めた場合には、腎臓病の可能性もあるため、早めに専門医療機関を受診しましょう。