心の病と薬の知識

2022年4月15日号
土浦市医師会 綿引秀夫(わたひきクリニック)

 心の病には、さまざまな病があります。例えば、神経症、うつ病、躁うつ病、統合失調症、認知症、発達障害、人格障害など、多くの病気があります。

 ある医者の論文では、多く見積もって、人口の6人に1人が心の病であると報告しています。ところが、心の病に対しての偏見が多く、病気があるのに病院を受診せず、社会生活ができなくなってしまう人もたくさんいます。

 心の病に対して、薬はとても有効なのですが、偏見がたくさんあります。薬を飲んでいると廃人になるとか、薬を飲んでいると依存症になってしまうと考えている人も多くいます。しかし、薬を飲まないことの害を知らない人が多くいるように思います。薬を飲まないことによって、憂鬱になり、自殺してしまう人や、被害妄想や、幻聴がひどくなり、他人に暴力をふるうようになる人もいます。

 しかし、風邪薬と心の病の薬には、違いもあります。風邪薬は、症状がなくなれば、やめてもいいのですが、心の病の薬は、やめると悪化してしまうことが多いです。心の病の薬でも、性質によって薬をやめたりすることもできますが、それは、主治医の先生とよく相談してください。その人が必要な薬をやめてしまうと、今まで効いていた薬が効かなくなり、結果として薬が増えてしまう人が多数います。インターネットや、専門家でない人の意見を鵜呑みにするのではなく、精神科専門医の意見を信用してください。

 なお、最近では副作用が少ない薬も発売されるようになりましたが、人によっては、昔の薬しか効かない人もいるので、その人に合った薬を見つけるには、ある程度の時間がかかります。1回通院しただけで、薬の効果がないと判断するのはやめたほうがいいと思います。

 病気によっては、カウンセリングで治らない病気もたくさんあるので、薬での治療も嫌がらずに行ってください。