高齢社会に求められる医療の対応と連携

2022年5月17日号
土浦市医師会 田幡雅裕(外科・内科天の橋立) 

高齢者や認知症患者の意思決定支援をするために

 高齢になると、「医師に任せる」「家族が言うとおりに」と、さもそれが自分の意志のように話される方がいます。もちろん、本心からの場合もありますが、これまでの家族との関係や、医師との関係から、「迷惑をかけたくない」「説明されてもわからないから、仕方がない」など、あきらめの感情からの発言である場合があります。特に認知症を発症すると、難しい会話内容がわからなくなったり、すぐに忘れてしまったりすることがあります。

 しかし、「説明しても忘れてしまう」「理解してもらえない」ことを理由にして全く説明をしないのは、その方の不安を強くし、不信感につながります。認知症の方が、不安を抱えることは、さらなる症状の悪化へつながりかねません。

 高齢であっても、認知症であっても、本人を尊重したコミュニケーションは、それぞれの意思を示しやすくなります。関わり手が思い込みで判断せず、ゆっくりと本人の意思を探っていくことが必要です。どんな人にも本人の意思を示す権利があります。

在宅医療と地域医療連携

 在宅医療では、地域住民に対するきめ細やかな医療サービスの提供が求められています。地域住民の一人ひとりと密な関わりを長期的に続け、長期的な健康管理を通して幸せな人生に貢献することが、地域で働く医師の目的となります。

 大学病院は、地域のさまざまな病院とネットワークを形成し、重症の患者や緊急性の高い患者を、いつでも受け入れる体制を整えておく必要があります。それによって、地域の病院との役割分担も明確になります。それはまた、地域住民が安心して地域での医療に自己の生命と健康を委ねるための根拠にもなります。