肺炎から身を守るために

2022年10月18日号
土浦市医師会 菊池教大(霞ヶ浦医療センター)

 肺炎にはどのようなイメージがあるでしょうか?高齢者の病気、誤嚥性肺炎、コロナ肺炎、肺炎球菌ワクチンなどでしょうか。

 昨今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のために、少し忘れがちになりますが、 肺炎は、わが国の死亡原因の4位となっています。ちなみに1位はがん、2位は心筋梗塞などの心疾患、3位は脳血管障害(脳梗塞など)、5位は老衰で、6位は誤嚥性肺炎です。4位と6位が肺炎ですね。

 実際に肺炎で亡くなる方の多くは、65歳以上の高齢者であり、80歳を超えると、ある意味がんより恐ろしい病気となります。がんはおおよそ数か月から数年かけて進行しますが、肺炎は重症の場合、数日から1週間程度で急に悪くなり、最悪の場合、命を落とすこともあります。また、誤嚥性肺炎のように、繰り返すことで、さらに体力が奪われる場合もあります。

 高齢者の肺炎は、まず合併症、たとえば喫煙による肺気腫、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣にともなう病気を有するケースがほとんどです。一般的に合併症が多いほど肺炎は治りにくく、重症化しやすいといわれています。また、脳梗塞や認知症などがあると徐々に嚥下機能の低下が起きて、誤嚥性肺炎を繰り返していくこともあります。最近話題となっているロコモは、運動器の障害、つまり筋骨格系の問題で日常生活に制限がある状態を指しますが、ロコモも肺炎の重症化や長期の入院につながっていきます。

 さて、肺炎を予防し、重症化を防ぐためには、どうしたらいいでしょうか。当たり前ですが、人間の体は1つです。心臓が良くても肺が悪いのでは、バランスがとれません。全体的に良い状態を無理なく目指していきたいものです。そのために、合併症を少なくすること、コントロールしておくことが重要です。

 まず、たばこを吸う方であれば禁煙、肥満傾向がある方は減量、高血圧の方は塩分制限などでしょうか。加えて、ロコモなどの心配がある方には、適度な運動を勧めています。

 65歳以上の方は、ワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌)を接種しておくこと、また、食後にきちんと口腔内のケアを行い、清潔を保っておくことが、肺炎予防の唯一の方法です。あとは、60歳以上の方や合併症のある方には、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種も強く勧めています。

 何か呼吸器の病気で心配のある方は、いつでも専門の病院にご相談ください。