女性の尿漏れと骨盤臓器脱

2022年8月17日号
土浦市医師会 和久夏衣(霞ヶ浦医療センター)

 「急にトイレに行きたくなるので外出しにくい」「くしゃみのたびに尿が漏れて花粉症の時期がつらい」「お風呂で腟から何かが出ているのに気づいてびっくり」などの経験をされている女性は、決して少なくないと思います。女性は体の構造上、男性より尿が漏れやすくなっています。出産、加齢、慢性的な便秘、腹圧がかかる動作などが原因で骨盤の底を支えている筋肉(骨盤底筋)が緩んでくると、尿漏れだけでなく骨盤内の臓器が腟方向へ下垂する骨盤臓器脱も起こりやすくなります。

 これらの予防や軽い症状の改善のために、まずはご自分でできることに取り組んでみましょう。体重増加や腹圧がかかる状態(慢性的な便秘や悪い姿勢、お腹に力がかかる動作や、下着などによる腹部の締め付け)があれば改善しましょう。軽い症状であれば、骨盤底筋訓練が有効な場合もあります。骨盤底筋訓練は尿道や肛門を締めながら骨盤底筋を引き上げ、緩める動作を繰り返します。さまざまなメディアで取り上げられており、ご自宅でも取り組みやすいのですが、腹圧をかけてしまうと骨盤底筋がさらに緩むので注意しましょう。また、尿漏れ対策として生理用品を使用している方も多いですが、かぶれたり、吸水が悪いと感じたり、臭いが気になる場合は、ご自分の漏れの程度に合わせた尿漏れ専用のライナーやパッドを使った方が良いでしょう。

 医療機関を受診された方には、問診、質問票のほか、必要に応じた検査(尿検査、超音波、排尿機能検査など)や診察を行い、生活指導や投薬、骨盤底筋訓練の指導、手術など、個々の患者さんに合った治療を検討します。

 尿漏れや骨盤臓器脱はなかなか人に相談しづらく、1人で思い悩んでしまう方も多いのですが、女性には珍しくないことです。受診されて症状が楽になると、「もっと早く病院に行っていれば良かった」とおっしゃる方も多いので、お困りの方はぜひ医療機関へご相談ください。